こんにちは。くらげです。
今日は、好きなお茶の話をしようと思います。
社会人になったとき、大好きだった中国茶のお店がありました。
静かな店主さんが営むそのお店は、温かい雰囲気と独特の静けさがあって、会社でしんどいことがあったとき、足を運びました。
そこでえいっと勇気を出して頼んでいたお茶が、東方美人という名前の中国茶です。
中国茶というと、皆さんがぱっと思い浮かぶのは烏龍茶でしょうか。
日本にも緑茶やほうじ茶などがありますが、紅茶も緑茶もほうじ茶も、全て元々は同じ種類の植物(茶の木・カメリアシネンシス)から出来ているって、知っていましたか?
ちなみに中国茶にも、緑茶や紅茶と呼ばれる種類のものがあります。
お茶の葉は、摘んでからすぐ発酵が始まる、面白い性質があります。
緑茶は、摘んですぐ蒸して、発酵を止めてから乾燥させたもの。
ほうじ茶は煎茶などの葉やくきを高温で炒ったもの。
烏龍茶は半発酵茶。紅茶は完全発酵茶と呼ばれます。
先ほど名前が出た「東方美人」は、分類でいうと烏龍茶です。
淹れていただいたお茶は、紅茶よりも少しだけ薄い茶色で、マスカットのような爽やかな香り。そして後味がすっきりと甘いものでした。
中国茶のことなんて何もわからなくて、名前だけで選んだけれど、
「本当に東方美人って名前がふさわしいような、美しいお茶だなあ」
と感じたのを覚えています。
私が知っていた烏龍茶は、サントリーのペットボトルの烏龍茶でした。
大好きなので今でも機会があれば飲みますが、お茶の水色も渋味も、まるで違います。
それで、なにがこんなに違うのか、気になって家に帰ってから調べてみました。
やー、びっくりしました。
東方美人がこんな魅力をもつ理由が、ウンカという虫だったからです。
ウンカは稲の害虫として有名な羽虫です。
ウンカが噛んだ茶葉は黄色く変色します。
その茶葉の1芯2葉だけを丁寧に選択して摘み、加工したものが、東方美人というお茶でした。ウンカという虫が、東方美人のフルーツの香りのする物質を作り出してくれていたのです。
この作り方だと、農薬はおそらく使えないでしょう(葉を噛むウンカが死んでしまうため)。ウンカが噛んだ茶葉を選択して摘むのは手作業でしょうし、その後の加工も、柔らかい中心の葉のみを摘んでいるため、大変デリケートな作業のようです。
東方美人の茶葉が、勇気を出さないと頼めないくらいの価格設定なのも納得です。
農家さんのお仕事ってすごいな~。
そして、あんなに美人なお茶が、私たちが「害虫」と呼んでいる虫の力を得て作られていることに、改めて驚きました。
ちょうど東方美人と出会った頃は、初めて社会に出て、自分の仕事のできなさ加減に打ちのめされていた時期でした。
このお茶のことを知ってから、
「自分は、まだまだ会社にとって不利益ばかりもたらしてしまう存在なのかもしれないけれど、もしかしてもしかしたら、ウンカとして何かの役に立つ機会があるのかもしれない。だから、もうちょっと頑張ろう!」
と気持ちを奮い立たせて会社に向かいました。
そこでの社会経験はとても苦いものでしたが、学生時代にさぼったツケをはらったようなものだと思っています。実際、沢山いろんな経験をさせていただきました。
その中国茶のお店は、その後しばらくして店主さんの都合で閉店してしまいましたが、あそこで過ごした時間のお陰で、東方美人というお茶にも出会えたなあと思います。
店主さん、元気にされているといいなあ。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
文字に起こしたら、なんだか熱くなってしまいました。
もし機会があれば、東方美人を飲んでみてくださいね。
ほんとうに、とってもおいしいお茶なんですよ。